いつもご覧頂きありがとうございます、現役外銀エドです。今回はSPACについて3分で解説いたします。
「SPAC(特別買収目的会社、スパック)」
SPACとはSpecial Purpose Acquisition Companyの略で、一般的な事業会社とは異なり、買収を目的に設立された会社です。
SPACは、自らは事業を経営せずに「未公開企業を通常の新規上場プロセスを経ずに上場させる」ためだけに設立されたいわばダミー会社。SPAC上場により資金を調達し、一定期間内に合併や買収用の資金を調達しようとする方法です。


一例として、民泊仲介の有名企業であるAirbnbは、SPACである「パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント」から合併の打診を受けていましたが、2020年8月に自らでIPO申請を行うなど、上場前に知名度の高い企業もSPACからの買収・合併の注目を浴びています。
1. SPAC上場の仕組みについて
(1) SPAC上場の流れ
- SPAC創業者は自己資本を投入してSPACを立ち上げます。
- 投資家から資金を集め、上場。
- 上場後、合併・買収する企業を探しM&A機会を模索。
- SPACに買収された企業と合併することにより、事業を営む被買収企業が存続会社および上場会社となります。
(2) 2020年のSPAC上場
SPAC上場が注目され出した理由は、昨年2020年にかつてないほどSPAC上場が盛んに行われたからです。
SPAC上場の件数は、2020年は248件、2019年は58件、2018年は41件、2017年は33件に及びます(上記棒グラフ参照)。
コロナバブルによる過剰流動性の投資機会を、少数の超優良投資家に提供しているのではとの期待と懸念が生じ、これが一極集中的にマネーを引き寄せSPAC上場バブルになろうとしています。
2. SPAC株式への投資は儲かる?メリット・デメリットについて。
(1) SPAC銘柄への投資 メリット
なぜこうした空箱のような上場会社のSPAC銘柄を買った投資家が、その後大きく儲かっているかについて2点の理由があります。
・著名投資家がSPACの経営陣もしくは出資者であり、その著名投資家が未公開企業を買収するのだから儲かるに違いない、という投資家の期待が働くから。
・プライベートエクイティの代替商品であり、少額資金且つ高い流動性で未公開株式取引に参加できるから。
通常、未公開企業への投資はプライベートエクイティファンドに出資したり直接投資する限られた投資家のみの領域ですが、SPACは既に上場企業となっているので、誰でも小額で投資可能となります。
また、PEファンドはエグジット(上場やバイアウト)までの期間は基本売却できず、4-10年ほどほったらかし状態になる低流動性資産です。それがSPACによりいつでも資金化可能なのはメリットですね。
(2) SPAC銘柄のデメリットとリスク
買収先の企業が実際よりもかなりショボかった、、言い換えると、SPACによる買収先のデューデリが失敗したパターンが最大のリスクです。
SPACから買収される企業が前評判よりもショボいと、買収→被買収企業を存続させ上場し続ける→ショボいせいで株価がどんどん下がっていく、その損失はSPAC株を買った個人投資家が背負うので、損を被ってしまうわけですね。
この注意点について、二コラという電気自動車の具体的事例を挙げて説明します。
二コラはイーロン・マスク氏率いるテスラのライバル企業として注目されていました。2020年6月にSPACと合併しNASDAQに上場、時価総額は一時3兆円を超えました。しかしその後、2020年9月に虚偽の広告を行ったというレポートがヘッジファンドから明るみにされると詐欺容疑が瞬く間に市場に浸透、創業者兼会長であったトレバー・ミルトン氏がすぐさま辞任するという衝撃の展開を迎えます。
電動トラックの新興メーカー、米ニコラは14日、米調査会社のヒンデンブルグ・リサーチが同社の技術説明について「誇大な宣伝による詐欺だ」などと批判した報告…【日経新聞2020年9月15日 引用】
上場前のデューデリが甘く、誇大広告の疑心暗鬼から株価はみるみる下落、とどめとなったのは、GMが資本提携を見直すと発表した時でした。
米GM、ニコラとの資本提携を撤回 電池供給のみに
米ゼネラル・モーターズ(GM)は30日、9月に基本合意した新興電気自動車(EV)メーカーのニコラとの資本・業務提携を見直すと発表した。20億ドル(約2080億円)規模のニコラ株の引き受けを撤回し、提携範囲を大型商用トラック向けの燃料電池の供給などに絞る。…【日経新聞2020年12月1日引用】
その期間中の株価の推移はこちら↓
2020年6月4日に上場し、ヘッジファンドの暴露があった夏以降からは凄まじい下げです。(チャート期間は1年)

3. SPAC上場のまとめと今後の見通しは?
Bloombergによれば、世界のスタートアップへの投資は2010年の258億米ドルから2019年には2274億米ドルに増加。2020年はこの1.5倍増しに着地すると言われています。スタートアップは未上場の段階でも資金調達を行いやすくなっており、IPOによって資金を調達する必要性が低下、そうなるとSPACに頼った上場というケースがより増えてくると思います。
例えば、日本のソフトバンク(9984、親会社で投資会社の方)が先日ナスダックにSPAC上場しましたね。株価は10ドルが初日で12ドルへ20%上昇。上々の滑り出しとなりました。
ソフトバンクGのSPAC1号、米ナスダックに8日上場へ
ソフトバンクグループは米国時間7日、第1号となる特別買収目的会社(SPAC)が8日に米ナスダック市場に上場し、取引を開始すると発表した。発表資料によると、SVFインベストメントの新規公開(IPO)価格は1単位当たり10ドル(1038円)で、発行・売り出し数は5250万単位。テクノロジー分野での…【Bloomberg 2021年1月8日引用】

こうした事例は今後も増えてくるでしょう。アリババなど中国系ファンドも出てくるのでは?
また、SPAC上場に類似するものとして直接上場という特殊な方法もあります。有名なのは「スポティファイ」
SPACを通じた株式市場への上場が増加するとともに、直接上場(ダイレクトリスティングによる上場)も増加している現状です。直接上場とは、上場時に新株を発行せずに、既存の株式のみを上場する手法。従来のIPOで行われる証券会社を通じた株式の引き受け・募集を行わないため、引受手数料などのコストを削減できます。さらにIPOよりも簡潔なプロセスで上場を行えるメリットがあります。
一方で、上場時に資金調達ができないため、既に十分に資金調達している未公開企業でしか活用できないというデメリットも存在しますが、ベンチャーキャピタル等の投資家にとっては上場によって既存投資の速やかな売却が可能となり、企業にとっても上場によって知名度が上がるなどのメリットがあります。

2021年もコロナバブルのカネ余りは続きそうです。面白そうなSPAC銘柄があれば未公開株への投資だと思って一度調べてみるのもいいですね。今後ますます注目が集まるのは必須でしょう!!
2021/01/16追記
同銘柄は初回記事投稿後も予想通り堅調に上昇していますね。但し、SVFAUの株を買える証券会社は限られているようです。一般的な楽天証券やSBI証券などでは取り扱っていないようなので注意が必要です。ご関心ある方は取り扱い証券をお調べになって下さい。
以上となります。最後までご覧頂きありがとうございました。
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