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今回は、プリンストン大学基金の運用状況やポートフォリオについてわかりやすく解説します。

順位 | 大学名 | 国 |
1 | オックスフォード大学 | 英 |
2 | カリフォルニア工科大学(Caltech) | 米国 |
3 | ケンブリッジ大学 | 英 |
4 | スタンフォード大学 | 米国 |
5 | マサチューセッツ工科大学(MIT) | 米国 |
6 | プリンストン大学 | 米国 |
7 | ハーバード大学 | 米国 |
8 | イェール大学 | 米国 |
9 | シカゴ大学 | 米国 |
10 | インペリアルカレッジロンドン | 英 |
*【The Times Higher Education World University Rankings 2020】より筆者作成
1. プリンストン大学基金の概要
大学 | Princeton University
ニュージャージー州プリンストン,1746年設立,学生数約8,000人 |
基金 | Princeton University Investment Company |
運用残高 | 270億ドル(約2.9兆円)(2019年末) |
2. プリンストン大学基金の運用実績について
20年間の平均リターンは11.2%。
20年間で唯一のマイナスリターンはリーマンショックの煽りを受けた2009年のみでイェール大学と同じような実績に。
プライベートエクイティおよび絶対リターン型のヘッジファンドの組み入れ比率が高い、そして、株や債券などの伝統的な運用資産のポジションが低位なことが特徴です(下表は右へスクロール)。
2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 | 2004年 | 2005年 | 2006年 |
33.5% | 2.4% | 2.2% | 8.2% | 16.8% | 17% | 19.5% |
2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 |
24.7% | 5.6% | -23.5% | 14.7% | 21.9% | 3.1% | 11.7% |
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 平均値 |
19.6% | 12.7% | 0.8% | 12.5% | 14.2% | 6.2% | 11.2% |
*【Princeton University Investment Company2020】より筆者作成(以降同様)
3. プリンストン大学基金のアセットアロケーション
4. プリンストン大学基金の運用状況について
ご覧のようにプリンストン大学運用基金(PRINCO)における運用成果は素晴らしく、相場の影響を過度に受けないポジションを構築しています。プリンストン大学運用基金は、
- 高い絶対リターンの獲得
- 市場指数の組み合わせに対するαの獲得
- 他の大学基金と比較した競合優位性
この3点を運用方針として掲げています。
また、こうした方針に加え、高いパフォーマンスの具体的な理由については以下の2点が考えられます。
①エンダウメント投資
「エンダウメント投資」とは大学機関等が採用する投資戦略です。投資の原資となるお金の返済義務がない為に長期運用が可能です。そのため、従来のファンドでは組み入れにくかったプライベートエクイティやヘッジファンドといったオルタナティブ資産への投資が積極的に行えます。
プリンストン大学エンダウメント投資は、積極的にオルタナティブへ投資、とりわけプライベート・エクイティと絶対リターン型ヘッジファンドへの運用割合が高いとして有名です。結果的に、この2大資産への配分がパフォーマンスを支えたといっても過言ではないでしょう。
個人投資家がオルタナティブ投資を直接運用または投資一任することはまだ一般的ではありませんが、彼らのようなエンダウメント投資戦略のアセットアロケーションを参考とすることは運用実績を高める手段として重要です。
②絶対リターン型ヘッジファンドの積極活用

日本の銀行や証券会社にある通常の投資信託は相対収益(相対リターン)を追求しています。一方で、ヘッジファンドでは絶対収益(絶対リターン)を追求します。
通常の投信の運用方法は2種類あって、株価指数と同じ動きを目指す運用方法(インデックス運用、パッシブ運用)とファンドマネージャーの裁量で運用する方法(アクティブ運用)があります。
とはいえ、アクティブ運用と言いつつも、結局は投資対象が株式や債券・リートなどであり、それらをファンドの総資産いっぱいにフルインベストすることが多く、ファンドマネージャーの裁量や運用技術は限られます。そのため、こうした運用条件下では「ベンチマークを上回る成果を目指す」相対収益の追求を目標とせざるを得ませんね。

これに対して、絶対収益(絶対リターン)とは、相場の変動にかかわらず投資元本を守ることができる運用手法(マーケットニュートラル戦略)や下落相場でも積極的に収益を獲得する運用(ロング・ショート戦略)などを使って、絶対収益の獲得を実現していこうというものです。

また、通常の投信では総資産をフルインベストメントするため、例えば株式ファンドならば株価指数の上昇局面において、インデックスと同等のリターンを期待します。インデックスが10%上がったなら、そのファンドが10%以上上がってはじめて評価されます。7-9%の上昇では評価されません、投信解約されるでしょう。また、下落局面ではマーケットが2割下げた時にそのファンドが1割しか下げていなければ評価されます。

しかしながら、絶対リターン型ファンドにおいてインデックスは原則関係がありません。ファンドマネージャーがあらかじめ設定した年間収益目標を期待リターンと考えます。よってインデックスとの対比はお門違いとなります。

プリンストン大学運用基金ではこの絶対リターン型ヘッジファンド(絶対収益型ヘッジファンド)の比率が25%、特徴的だと言えますね。
以上となります。

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